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生ずると緊急度・重要度の高い活動と低い活動が同時にスタートすることになる。
そのため、極端な場合には次のようなことが起きないとも限らない。
阪神・淡路大震災のように多数の要救出現場や火災が発生した場合には、人的・物的資源を人命救出活動、災害の拡大防止活動に集中することが緊急かつ重要である。
しかしながら、前述の緊急度・重要度の示されていない事務分掌表を用いると、救出活動や消防活動に従事する課や部隊がある一方で、農作物の被害状況や商工業施設の被害状況を把握(何れも経済的損害の把握が中心)したり、視察団の応接の準備などを開始する課も存在することになる。
もちろん、実際の大規模災害時にはここまで極端なことは少ないと思われるが、それでも現在の「事務分掌表」が緊急度・重要度を余り考慮していないことは理解できるであろう。
この例からもわかるように、発災時には限られた人的・物的資源と時間のもとで最大の効果をあげ得るように対応しなければならないが、そのためには、緊急度・重要度の高い業務(活動)を分類・整理し、それに見合った体制を整備しておく必要がある。
(3)問題点3:情報管理の考え方が弱い
阪神・淡路大震災では「危機管理」が問題とされ、効果的な危機管理のためには情報が決定的に重要であることが指摘された。地域防災計画では、情報に関する計画は「情報収集伝達計画」などの形で災害応急対策計画中に示されているが、以下の点で問題を抱えているところが多い。
?収集情報の優先順位が明確でない
情報は災害応急対策活動を支援するために必要である。ところで、(2)で述べたように災害応急対策活動には重要度・緊急度の高いものと低いものがある。そのため、重要度・緊急度の高い活動を支援する情報は当然収集の優先順位も高くなければならない。
そのような視点で情報の優先順位を整理すると、例に示すような順位づけ方法も考えられる。しかしながら、現在の情報収集伝達計画の中には、この順位づけが明確でないものが多い。そのため、(2)で述べたことと同様、優先度の高い情報も低い情報も災害状況に関係なく収集してしまう懸念がある。
(例)
第1位人命危険関係(要救出現場数、火災などの災害危険の拡大に関する情報、津波危険情報、人命の救出・救命に必要とされるその他の情報)
第2位住家被害
第3位その他被害
??に沿った情報収集体制が明確でない
特に、阪神・淡路大震災で問題となった「要救出現場数」に関する情報収集体制が明確でない。
以下に具体的にみてみよう。
表14を用いて、人口5万人の市を阪神・淡路大震災級の地震が襲い、管内に1000を越える要救出現場が発生したと仮定してみよう。
まず、管内にこれだけ多くの要救出現場が発生したことを誰がどのような手段で把握するのかが大きな問題となる。消防職員か。消防団員か、町村職員か、それとも住民か?。残念ながら、現在の地域防災計画では要救出現場の把握は誰が行うといったことはほとんど記載されていない。まれに、消防部(消防本部)の分掌事務

 

 

 

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